top of page

#3. Cry Me A River

執筆者の写真: Hiro KHiro K

更新日:2020年5月8日

(おすすめ動画)

✴︎Diana Krall

✴︎Linda Ronstadt

✴︎Barbra Streisand


(Background)

アメリカ合衆国の作曲家であるアーサー・ハミルトン(Arthur Hamilton 1926-)が、1953年に作詞・作曲した、ポピュラーソングである。

自らを一度は裏切りながら復縁を乞う恋人に向かい「いまさらもう遅い、川のように泣くがいい」と冷ややかに突き放すという内容の、恨み節がかったブルーバラードの曲。

1955年にジュリー・ロンドンの歌唱で大ヒットし、彼女の代名詞となると共に、今日までロックやジャズ、ブルースなどといった、様々なジャンルのアーティストが採り上げる、スタンダード・ナンバーの一つとなった。

(個人的見解)

歌詞の中の様々な情景を目まぐるしく変わる転調で表現している。また、メロディーもまるでベートーベンのピアノソナタのモチーフの展開のように作られ、そして、歌詞の意味と音楽が素晴らしく連動しており、クラシックのバックグランドがある作曲家が作曲したと思わせる素クオリティーの高い楽曲だと思います。

このような楽曲って、少し音楽の素養のある素人がサラッと書ける楽曲では無いと思います。音楽をよく知る人がサラッと書いたか、あるいは、考えに考えて作ったかのどちらかだと思います。

この楽曲を演奏しているアーティストは沢山おりアレンジも様々です。下記の分析の通り作曲的な展開が明確で、特に、Bメロの後半部のGメジャースケールの雰囲気がきちんと出ているものとして、上記の「おすすめ動画」は楽曲を忠実に表現していると言えると思います。


(Harmony Aメロ(m.1-9))

・楽曲の中で一番高い音(D)と共にCmスケール始まり、3小節目付近から平行調であるEbMスケール(m.3-4)へ。Aメロの後半(m.5-8)は、スケール内のコード進行(or Iの拡張とも言える)である前半部分に対して、サブドミナントを挟んだ5度進行のシークエンスとなっている。

(Melody Aメロ(m.1-9))

・出だしのモチーフは二分音符と八部音符をタイで結んだもの。Aメロ後半部のは前半部のモチーフをおよそ半分の長さにしたものと言える。

・(歌詞)元恋人の現在の状況を表現。


(Harmony Bメロ前半(m.10-15))

・Bメロはセカンダリードミナントを使い(m.9)いきなり近親調であるGm(=3b→2b)から始まる。GmはEbのiiiであるので違和感が無い。

(Melody Bメロ前半(m.10-15))

・モチーフはAメロの1小節目のモチーフの後半部が元になっている。八部休符の理由は分かりますよね?


(Harmony Bメロ後半(m.16-17))

特筆すべきは、このBメロの後半の2小節(m.16-17)。Bメロ前半のGmスケールと同主調であるGMスケールへの転調である。2つのフラットのあるスケールから1つの#のあるスケールへ転調で雰囲気がガラッと変わるが、同主調である為違和感が無い。ここで楽曲全体の基調であるCmスケールと対照的なメジャーコードを絶妙のタイミングで使用し雰囲気が一瞬明るくなる。歌詞は元恋人の過去の発言を表している。前半の「told me love was too plebeian=(元恋人が)平凡すぎる愛だ。」後半「told me you were thru with me=もう僕たちの関係は終わっている。」と発言した上から目線の元恋人の過去の栄光を皮肉るようなコード進行である。しかもたった2小節(一瞬の栄光!?)

このBメロの基調であるGスケールはsusを使うことによってスムーズにドミナントコードへ変貌し、Aメロの最高音へ劇的に移行((Vーi)終止)する。ここで改めて、この楽曲のクライマックスが曲の頭であることを認識させる。そう、この楽曲はクライマックスから始まる楽曲なのです!クライマックスから始まる楽曲はその後の展開をきちんと工夫しないとなかなか上手くいかないものですが、この楽曲は徐々に転調の度合い(基調からの離れ具合)を増し、明るいGMへと到達。メリハリのある楽曲となっていると言えると思います。

※余談ですが、私の知る音楽の先生

は、あの有名なブラームスの交響曲第1番の第一楽章について、とても迫力のある出だしだが、楽曲中、出だし以上に印象的で迫力のある部分が無く、展開としてはあまり出来が良く無い、と話していました。これはあくまで個人の意見ですが、どのように楽曲を展開していくかというのは作曲家に大きな命題ですね。

(参考) Brahms 交響曲第1番 第一楽章


(Melody Bメロ後半(m.16-17))

・Bメロ前半のモチーフがさらに細分化され、ここで初めて十六部音符が登場。もうお分かりの通り、ハーモニーの展開だけでなく、モチーフも徐々に展開していることが分かります。Bメロの後半で楽曲のモチーフが最も細分化され、そして、Aメロの元の長いモチーフに戻るのはモチーフの対照が劇的に表現されていると言えると思います。

・(歌詞)元恋人に対する過去の自分の苦労を表現。

(歌詞)元恋人の発言。





(歌詞)

A

Now you say you're lonely

今あなたは寂しいという

You cried the long night through

(そして)一晩中泣いていたと。

Well, you can cry me a river

ええ、泣いてれば良いのよ。

Cry me a river

泣いていれば。

I cried a river over you

私はあなたの為にどれだけ泣いたことか。


Now you say you're sorry

今あなたは謝っている

For being so untrue

正直でいなかったことに。

Well, you can cry me a river

ええ、泣いていれば良いのよ。

Cry me a river

泣いていれば。

I cried a river over you

私はあなたの為にどれだけ泣いたことか。


B

You drove me,

あなたは私をどんな風にしたか

Nearly drove me out of my head

私をおかしくしてしまった。

While you never shed a tear

その間あなたは一粒の涙も見せなかった。

Remember?

覚えている?

I remember all that you said

私はあなたが話したことを全部覚えているわ。

Told me love was too plebeian

あなたは、ありきたりの愛だと言ったわ。

Told me you were through with me and

もう私たちの関係は終わったって言ったわ。そして、


A2

Now you say you say love me

今あなたは私を愛しているって言っている。

Well, just to prove you do

だったらそれを私に証明して見なさい。

Come on and cry me a river

さあ、泣きなさい。

Cry me a river

泣いていれば良いのよ。

I cried a river over you

私はあなたの為に散々泣いたんだから。


 
 
 

Comments


©2022 by Studio Canon LLC

bottom of page